電気工事業の簡易課税の事業区分は3種になる?4種になる場合とは?
今回はセキュリティシステムの施行等を請け負う電気工事業を営む請求人の簡易課税の事業区分について争われた裁決(平成22年9月2日裁決)のご紹介となります。
もちろんこの事例をもって、どのような事例にもそのまま適用できるわけではありません。
一方で、その判断の理由を知ることで実務にも活かせる部分があるのではないかと感じます。
建設業の3種と4種の判定は実務的な落とし穴にもなりかねませんので、しっかりと確認しておきたいところです。
どんな内容だったのか
セキュリティシステムの施行等を請け負う電気工事業を営む請求人の簡易課税の事業区分が3種に該当するか、それとも、4種になるかということになります。
もう少し突っ込んで言うと、請求人の行う事業が「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当するか否かということになります。
審判所の法令解釈
まずは、3種と4種の判定に必要な審判所の法令解釈を見ていきたいと思います。
(1) 法令解釈イ 消費税法施行令第57条第5項は、簡易課税制度上の第一種事業から第五種事業までの事業区分について規定しているところ、同項第3号かっこ書の規定が、第三種事業から「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」を除外し、同項第5号の規定によってこれを第四種事業とした趣旨は、他の者の原料若しくは材料又は製品等(以下「原材料等」という。)に加工等を加えるなど、専ら労力や技術等の提供を行う事業は、原材料等に係る仕入れそのものがなく、自ら調達した原材料等に加工等を施す事業よりも課税資産の譲渡等に係る消費税額のうちに課税仕入れ等の税額の通常占める割合が一般に低いことによるものと解される。ロ また、消費税法基本通達13-2-7は、消費税法施行令第57条第5項第3号かっこ書の「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」の意義について、対価たる料金の名称のいかんを問わず、他の者の原材料等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供をいう旨定めているところ、当該通達の定めは、上記イの趣旨からみて、当審判所においても相当と認められる。
3種事業から「加工賃~」を4種事業とした趣旨は、材料仕入がないからその分だけ課税仕入が少なくなるでしょというわけですね。
念のため、消費税法基本通達13-2-7も裁決からそのまま抜粋します。
消費税法基本通達13-2-7《加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供の意義》消費税法施行令第57条第5項第3号(事業の種類)に規定する「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」とは、13-2-4本文の規定により判定した結果、製造業等に該当することとなる事業に係るもののうち、対価たる料金の名称のいかんを問わず、他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供をいう。なお、当該役務の提供を行う事業は第四種事業に該当することとする。
どのような事業内容だったのか
次に、今回の事例がどのような事業だったか、審判所の事実認定から確認してみたいと思います。
上記(2)によれば、次の事実が認められる。イ 上記(2)のイの(ハ)のとおり、セキュリティ工事とは、J社の営業に伴う警備システム・防災システム・その他各種機器の設置・撤去・移設工事とすると定められているところ、同ホの(イ)から(ハ)までのGの答述によれば、本件事業の内容は、セキュリティ機器の主装置であるコントローラや端末機器を設置し、設置場所と分電盤との電気配線、電話の保安器との配線並びにすべての窓、出入口及び各部屋へのセンサーの設置・配線を行い、各センサーをコントローラに接続し、最後に各センサーの稼働状況をチェックし、セキュリティシステムが正常に稼動するように工事を行うものであることが認められる。ロ そして、上記(2)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、H社が請求人に業務を発注するときは、当該業務に必要なセキュリティ機器及び材料のうち、H社が無償で支給するものの品名及び数量を発注書に明示すると定められ、同イの(ニ)のとおり、当該セキュリティ機器等は、その交付を受けたときから工事の全部をH社が完成したと認めるときまで、請求人が善良な管理者の注意をもってこれを維持管理することとされていること、また、同ロ及び同ハのとおり、H社が請求人に無償支給する機器は、H社がJ社から支給されるセキュリティ機器を指すものであることが認められること、さらに、同ホの(ニ)のとおり、Gが、請求人はセキュリティ機器を仕入れることはなく、セキュリティ機器はすべてJ社で管理されており、請求人の所有ではない旨答述していることからすれば、本件事業において設置するセキュリティ機器は、請求人が自ら調達するのではなく、H社から提供されていることが認められる。ハ また、上記(2)のホの(ホ)のとおり、本件事業は、電気工事士2種以上、電話工事担任者及び消防設備士甲4類の各資格保持者の技術を提供するものであること、かつ、同イの(ロ)及び同ニのとおり、請求人が受領する工事代金が配線工事、機器設置工事、機器調整等の作業に対する対価であると認められることからすれば、請求人が受領する工事代金は、人的役務の提供に対する対価であると認めるのが相当である。
内容としては、無償提供されたセキュリティ機器の取り付け工事を行っているということですね。
ただし、後にも出てきますが、セキュリティ機器は無償提供されるものの、ケーブルなどの配線は請求人が有償で調達しているのですが、この辺りはどのように判断されたのでしょうか。
結論
さて、最終的にはどのように判断されたのでしょうか。
(4) 本件への当てはめ上記(3)の各事実を上記(1)に照らして判断すると、次のとおりである。イ 本件事業は、上記(3)のイ及びロのとおり、H社からセキュリティ機器の提供を受け、当該機器の設置、配線、調整等を行い、セキュリティシステムを正常に稼動させるまでの工事を行うものであり、また、同ハのとおり、その工事代金は、人的役務の提供に対する対価であると認められることからすると、本件事業は、他の者の原材料等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供に該当し、消費税法施行令第57条第5項第3号かっこ書の「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当する事業というべきである。したがって、本件事業は、消費税法施行令第57条第5項第5号に規定する第四種事業に該当するものと認められる。ロ これに対し、請求人は、本件事業は、時間的観点からいえば、セキュリティ工事のうち配線工事が主であり、また、施工に必要とされるコードケーブル等の資材は、請求人が全部調達して配線工事を行っているから、本件事業は、第四種事業には該当しない旨主張するが、上記イのとおり、本件事業は、H社からセキュリティ機器の提供を受け、当該機器の設置、配線、調整等を行うもので、他の者の原材料等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供にほかならず、第四種事業に該当すると認められることから、本件事業は第四種事業に該当しない旨の請求人の主張は採用できない。
請求人はケーブルなどは自己調達で工事の工数的には配線工事がメインだと、だから3種と主張するわけですが、あくまでセキュリティ機器の提供を受けて工事を行うものだから駄目だということ。
ケーブルなどの材料仕入を行っているということだけを見て判断してしまうと、誤ってしまう可能性があるというなのことですね。
まとめ
簡易課税だからと安心しているとこのような落とし穴もあるので注意が必要です。
この事例を見ると、電気工事業は4種になる部分がかなり多いのではと個人的に感じるところです。
とにかく、事業の詳細をしっかり確認しないといけないなと感じました。
簡易課税の業種区分をミスしてしまうと一気に納税負担が変わってきますので、インパクトも大きく本当にヒヤッとしますね。思い込みでスルーしてしまわないように注意せねばと感じたところです。