税理士試験の受験から得たものと失ったものを考えてみました
税理士試験に限らず、難関と言われる国家資格を受験する方の大半は自分の人生をかけて試験に挑んでいると言っても良いかもしれません。
このため、受験中は多くのものを我慢することになる反面、得るものも大きいのだと思います。
今回は、私自身の受験期間を振り返って、失ったものと得たものを書いてみたいと思います。
受験前は得るものばかりに目がいってしまいがちですが、事前に、失ってしまうかもしれないものもしっかりと把握しつつ、その上で受験の決断が出来れば、ブレることなく受験勉強に邁進できるようになるのではと感じます。
税理士試験を受けることで失ったもの
私の場合は、受験をはじめる前に、税理士試験を受けることの代償(失ってしまうかもしれないもの)をしっかりと考えずに、ある意味、勢いで突入してしまった部分があります。
今振り返ってみて、自分自身が失ったものとして、大きかったものをまずは書いてみたいと思います。
20代の頃の貴重な時間
一番大きいのは、本来以下のようなことをしていたであろう「20代の貴重な時間」を受験勉強のためににささげたということになります。
- 遊ぶ時間
- 旅行に行く時間
- 飲みに行く時間
- ダラダラする時間
- 睡眠時間
- 休息をとる時間
- 家族とのだんらんの時間
- 働く時間
- 読書の時間
- などなど
もちろん、みんなが遊んだり、休息をとったりしているときに、自分を律してしっかりと勉強をするからこそ、得られるものも大きいのだと思います。
ただ、仕方ないかもしれませんが、自由な時間のほぼ全てを受験勉強に投下しますので、あきらめないといけないこともあるという点は考慮しておくべきかと思います。
切り崩した貯金残高
私の場合は、途中から受験に専念しましたので、それまでに貯金していたお金がどんどん減っていくことになりました。
ざっとあげてみると以下のような感じでしょうか。
- 約2年間の受験専念期間中に働いていれば得られたであろう収入
- 5科目分の税理士試験の受験料
- 5科目分の専門学校の講座代
- 専門学校関連の諸経費(ロッカー、交通費、コピーなど)
- 合格体験記、法規集、問題集、理論CDなどの専門学校以外の教材代
- 電卓、ストップウォッチ、ボールペンなどの道具代
専念前に資金繰り表を作っていましたが、とにかく恐ろしいくらいにお金が減っていきました。
今でもこの期間中の投資分を回収できただろうかと頭によぎることが(苦笑)
もちろん、お金に換算できないものをたくさん得ましたので、お金ベースで考える投資回収という観点はあまり適切でないのだろうとは思います。
それに、貯金と引き換えに勉強だけに専念できる環境を得たと考えると、その後の時間を買ったというようにも考えられますし、個人的にはそれはそれでよかったと納得しています。
受験期間中の人づきあい
受験前は、同僚や先輩、上司、友人などと飲みに行ったり、ゴルフに行ったりすることもありましたが、受験期間中は一気に疎遠になりました。
特に、専念期間中は、付き合いを避けたい気持ちが強かったのも事実です。
税理士業界では、ある程度受験専念期間という考え方も許容されることがありますが、一般の業界では全く理解できないことでしょうし、何となく後ろめたい気持ちもありました。
もちろん、後ろ向きな理由に加えて、遊んでいる場合じゃない、そんな時間があれば勉強しないと、という気持ちもありました。
「新卒入社」という価値
新卒で勤めた会社には何の不満もなく、逆に愛社精神すらありましたので、退職して受験に専念するかどうかについては、本当に悩みました。
当時はまだまだ「新卒入社」というものにそれなりの価値があると思っていましたし、もうそこには戻れないと思うとビビってしまう気持ちもあったのだろうと思います。
学生時代の友人たちも、当然のように新卒で入った会社でそのまま頑張っていましたし、なんだか異端児になったのかのような気持ちにもなりました(苦笑)
もちろん、周りと同じようなレールを進むことだけが必ず正しいとも限りませんし、自分の信じた道を進むべきかと思います。
税理士試験を受けることで得ることが出来たもの
私の場合は、物質的なものよりは、目に見えない気持ちの部分の方が大きかったように感じます。
もともと、優秀なタイプでも、コミュニケーションに秀でていたわけでもなく、どちらかというと少し控えめで自信なさげな感じのタイプではありましたが、税理士試験を経たことで少しは気持ち的にも変わった部分があったのではと。
税理士資格
まずは、やっぱり、税理士資格ですね。
税理士バッチをもらえた時は本当にうれしかったことを覚えています。
このためにたくさんのものを失ってきたと言っても言い過ぎではありませんし、非常に苦労して獲得したものですので、思い入れも強く、ある意味、今の自分自身のよりどころになっているような感じでもあります。
受験専念時代には、いつかは周りを見返そうという感じで、若干屈折(笑)した気持ちを力に変えて頑張っていた部分もありましたので、その反動もあるのでしょうか(汗)
他の人には絶対に負けないという分野
新卒で勤めた会社の同期や先輩、上司は非常に優秀で、学歴や対人能力、既に持っている資格・・・と、ありとあらゆる性能を比較しても勝てる部分がないように感じていました。
もちろん、そんな優秀な同期たちと同じ土俵に上がれたということはうれしくもあったのですが、その中で自分自身が生き残ることも考えなくてはなりませんでした。
税理士試験の受験は、「100のうち99は負けてもいいけど、1つだけでも他人に勝てる分野を持ちたい」という、自分自身の生存戦略としての思いも込めてスタートしていました。
結局、新卒で勤めた会社は退職をしてしまいましたが、どんなに周りが優秀であろうと、この分野では負けないぞと思えるようになったことで、少しは気持ち的にも楽になったような気がします。
自分に対するほんの少しの自信
辛い試験を乗り越えてきたことで、ほんの少しではありますが、自分自身に対する自信にもつながったような気がします。
人生であれだけストイックに勉強して、あれだけ精神的にも追い込んで一つのことに打ち込んだ期間はありませんでした。
このため、少なくともそれを乗り越えられたということは間違いのない明確な事実でもありますので、ほんの少しの自信にもつながっているのだろうと感じます。
生き方の選択肢
会社を退職して受験専念に突入したことで、「新卒であることの価値」は失いましたが、生き方や働き方の選択肢は多く持てるようになったと感じます。
税理士事務所で所属税理士として働くことも一つですし、企業の経理という選択肢もあります。
そしてなにより、独立開業という選択肢もありますので、自分自身の生き方や働き方の幅は広がったのかなと感じています。
とにかく、何かに依存してしまうと、「自由」は失われますので、そのためには、しっかりと「自立」する必要があります。そして、自立できるためには絶え間ない自己研鑽により「自己成長」を続ける必要があると常に自分に言い聞かせています。
まとめ
この記事を書くのにものすごく時間がかかりました。
本当に自分の気持ちをきちんと整理することが出来たのか、100%の自信はありませんが、一旦、今の気持ちを書かせて頂きました。今後書き直すかもしれません(汗)
書いたことを読み直すと気持ちの面ばかりの記載になってしまったのは、苦笑するしかありませんが、とにかく毎日とても楽しいです。
振返ってみても税理士試験を受けて本当に良かったと感じています。
得たもの、失ったものは人それぞれなのだと思います。私の場合は、受験専念期間が長かったからか、気持ちの面ばかり書いてしまいました(汗)今回はあくまで私の経験談となりますが、私の周りの税理士を見渡してみても、みんな本当に毎日楽しそうに生き生きと働いています!